肌にふれるタッチングが心地良さやリラックス効果をもたらすことがわかってきています。マッサージなどの施術をしなくても、タッチングだけでも安心感とストレスが軽減されます。この身体的接触は、乳幼児期のこどもと養育者との心のつながりにおおきな影響をあたえます。成人であっても、スキンシップは孤独を癒す大切な手段となります。
タッチングとは
タッチングは、どんな意味、そして行為をいうのでしょう。今回参照した文献では、
意図的に受け手の皮膚に触れることで、手を当てたり、さすったり、揉んだり、押したりする方法で行われるもの、と定義しています。
このタッチングとは「意図的に」おこなうことを含んでいましたが、私達は普段、自分やだれかの身体に手を当てることは無意識におこなっています。
それは手当と呼ばれるものであり、ごく自然に触れ合うようなものが多いと思います。
手当とは
たとえば、お腹が痛いとごく自然にからだを前かがみにしてお腹をさすったり、手を当てたりします。
またつらい経験をしたとき、その場にいる人が背中をさすったり、ゆっくり手を握りしめたりします。
これは、コロナ禍によって、親しい人との接触を断たれたとき多くの人がストレスを抱えたり、精神的に落ち込んだりしたことから、注目されたことでもあります。
したがって、なでてもらったり、手を握ってもらうなどで、なんとなく心が温かくなった、さびしさがやわらいだ、ということを経験上知っています。
また、手当てよりも、もう少しお互いの関係性の上で行う触れ合いとして、スキンシップがあります。
タッチングよりは積極的ではないものの、お互いの信頼関係と安心感の上で行われます。
日本人はスキンシップが苦手?
日本人は世界の中でもスキンシップが少ない民族といわれています。その理由をあげるとすると・・・
日本の文化では、個人の空間を尊重することが非常に重要とされています。
伝統的に、日本人は他人との物理的な距離を保つことが礼儀とされてきました。
たとえば、満員電車などのやむを得ない状況を除き、他人と近づきすぎないようにすることが日常の礼儀作法として浸透しています。
このため、スキンシップを行うことが他人の空間を侵害する行為と見なされることがあります。
日本文化では、言葉以外の間接的なコミュニケーション(表情、仕草、沈黙など)が非常に重視されます。
直接的な感情表現や身体接触は、控えめであることが美徳とされるため、スキンシップを通じた親密さの表現は避けられがちです。
日本の伝統的な価値観には、礼儀や慎み深さが根付いています。
例えば、武士道や儒教の影響を受けた日本の社会では、他人との親密な接触は控えるべきだとされてきました。
この歴史的背景が、現代でもスキンシップへの抵抗感につながっていると考えられます。
日本は集団主義的な社会であり、個人の行動が周囲にどのように影響を与えるかを非常に気にします。
スキンシップが個人の行動として目立つ場合、それが集団の調和を乱す可能性があると考えられ、避けられることがあります。
など、日本人特有の文化や生活習慣に基づいた理由がありそうです。現代の若者はもう少し違う価値観をもっているかもしれません。
また、成長過程では、ある年齢、たとえば思春期になると、とたんに親を生理的に嫌ったり、触られたくないという時期があります。
現代は、一人暮らしが増え続け、たとえ家族といてもコミュニケーションがとりづらく、孤独を感じる人が多い時代かもしれません。
ネットからの様々な刺激を受けながらも、どこかに虚しさを感じるときがあるのではないでしょうか。
リアルな触れ合いを求めて、ペットを飼ったりすることもその癒しを得る手段といえます。
まとめ
私達が日常的におこなっているスキンシップですが、それらはとくに意識することなくおこなわれています。
ただ、日本人には積極的なスキンシップや、意図的におこなうタッチングのような行為はなかなかうまく行動に移せません。その主な理由などを挙げてみましたが、個々人になるとまた、いろいろな理由はありそうですね。
もっと積極的にスキンシップやタッチングを生活に取り入れること、ひいては病気治療中の人への上手な働きかけの一つとして取り入れることは、私達がより孤独感や不安感を減らし、もっと人生を自分らしく生きるための大切な手段になると、私は強く思います。
つぎのブログでは、スキンシップよりも、もっと積極的なタッチングという行為が私達のからだと心にどのような影響をあたえるのか、より具体的に考えてみたいと思います。
- 参照文献
- 山口創 タッチの魔法 アロマの奇跡 BAB ジャパン
- 桜美林大学大学院 国際学研究科 国際人文社会科学専攻 人見太一
- 皮膚の特性に基づいた主観的心地よさ及びリラクセーション効果をもたらす タッチング方法の検証 -医療現場への導入を視野に入れて-
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