母の日に「香り」という特別な贈り物を。お母さんの匂いの記憶や脳との関係、香りがもたらす安心感やつながりについて、季節や日本の風土も交えて丁寧にご紹介します。
5月、香りとともに想う母の日
5月は、やわらかな風が吹き、新緑の香りが街を包み込む季節です。
色とりどりの花々が咲き誇り、自然の息吹が肌に心地よく感じられるこの月には、「母の日」という大切な日があります。
日頃はなかなか伝えられない感謝の気持ち。今年は“香り”という、目には見えないけれど心に深く残る贈り物を選んでみませんか?
香りが呼び起こす“お母さん”の記憶
香りは、私たちの記憶と深く結びついています。特に「お母さんの匂い」は、どんな人にとっても忘れがたい存在です。
赤ちゃんは生まれた瞬間から、お母さんの肌のぬくもりと、そこから漂う自然な匂いに包まれて安心を覚えます。
こうして嗅覚を通して生まれる安心感は、人生のごく初期から私たちの心に根付き、その後の人生においても繰り返し記憶の扉を開いてくれます。
脳と香りの深い関係〜嗅覚が心に届くしくみ〜
実は香りは、脳の中でもとくに感情や記憶をつかさどる「扁桃体」や「海馬」にダイレクトに働きかける感覚です。
五感の中で、嗅覚だけが大脳辺縁系という本能的で感情的な領域と直接つながっているため、香りは理屈ではなく「感じる」ものとして心に響きやすいのです。
たとえば、昔の家の匂いや、ある香水の香りをふと感じたとき、懐かしい情景が一気によみがえった経験はありませんか?
それは香りが脳に働きかけ、感情の記憶と結びついているからなのです。
それぞれに刻まれた「お母さんの匂い」
「お母さんの匂い」と聞いて、何を思い浮かべますか?
陽に当てた布団の匂い、台所から漂う料理の香ばしさ、やさしいハンドクリームの香り……
人それぞれに、胸に残るお母さんの香りがあるのではないでしょうか。
そうした匂いは、言葉以上に私たちの安心感や愛情の記憶を呼び起こし、心の深い部分にそっと寄り添ってくれる存在です。
まさに、“心の拠り所”といえるでしょう。
年齢を重ねて変わる香りとの付き合い方
年齢とともに、香りの感じ方も変わっていきます。
加齢によって嗅覚が少しずつ鈍くなることもありますが、それでもなお香りは、深い記憶や感情を呼び覚まし、心に穏やかさや明るさを運んでくれるものです。
特に中高年期には、やさしい香りが日常の中でふとした癒しとなり、心のバランスを整える手助けになってくれることもあります。
香りが紡ぐ、母と子の見えない絆
母と子の絆は、言葉や表情だけでなく、実は香りという“感覚の記憶”でも育まれています。
赤ちゃんは、生まれてまもなくお母さんの匂いを嗅ぎ分ける力を持ち、それによって安心し、情緒が安定するといわれています。
大人になっても、香りを通して思い出がよみがえることがあります。
「あの時のぬくもりを思い出した」「ふと涙が出てきた」という瞬間。
それは香りが心の奥深くの記憶を優しく呼び起こしてくれている証です。
母の日に贈りたい、香りのギフト
では、母の日に香りをプレゼントするとしたら、どのような香りがふさわしいのでしょうか?
日本の5月は、少しずつ湿度が高まり、初夏の気配も感じ始める時期。
そんな季節には、軽やかで爽やかな香りや、やさしい花の香りが心地よく感じられます。
5月にぴったりの香りのプレゼントアロマ
香りの贈り物としておすすめなのは、次のようなエッセンシャルオイルやアロマアイテムです。
- ローズ(ダマスクローズ)
上品で華やかな香り。気持ちを穏やかに整えてくれるとされており、特別な日にぴったりの一品です。 - ラベンダー
リラックスを助ける香りとして人気。お休み前のナイトミストや、ハンドクリームとしても喜ばれます。 - ベルガモット
柑橘系のさわやかさとほのかな甘さが魅力。気持ちを明るくしたい時にそっと寄り添ってくれる香りです。 - ヒノキやユズ
日本の自然を感じられる香り。懐かしさや安心感を運び、年配の方にも親しみやすいでしょう。
贈り方としては、アロマストーンとセットにしたオイルや、香り付きのハンドクリーム、バスソルト、ルームスプレーなど、日常の中で気軽に楽しめるアイテムが喜ばれます。
香りと記憶をつなぐ時間
もし、お母さまがすでに旅立たれている場合でも、その記憶を香りとともに静かにたどることはできます。
お母さまが好きだったお花の香りや、かつて使っていた香水を身につけることで、そっと心が満たされたり、不思議とそばにいるような感覚になることもあるでしょう。
香りは目に見えませんが、たしかに存在し、私たちの心の奥にある感情や思い出を静かに呼び覚ましてくれます。
今年の母の日は、「ありがとう」の気持ちを香りにのせて、あたたかな記憶とともに心を通わせる日にしてみてはいかがでしょうか。
母の日は、過ぎ去る一日ではなく、心の中で生き続ける“つながり”を感じる日でもあります。
香りというやさしい贈り物が、そのつながりをそっと支えてくれますように。
編集後記(筆者の体験より)
私の母は一昨年2月に亡くなりました。
70代後半から認知症が進行し、80才半ば、特別養護老人施設で息を引き取りました。
私も母が元気なときは、母の日にはプレゼントを贈ったり、食事に連れていったこともありました。
母と娘の関係は、千差万別ですね。
母に対する素直な感謝の気持ちとともに、近い関係だったゆえにお互いに対する期待や失望などがいろいろとありました。
亡くなったあとにとても驚いたことがありました。
それは、私自身が鏡を見たとき、おもわず「お母さんがいる!」と思ったことがあったのです。
まさにいまの私の年代、60才ごろの母の姿のようでした。
もっとも、見た目というより、まとっている雰囲気というか、私が若いころに母を見ていて、無意識に感じたものです。
私が歳をとった、ということもありますが、まざまざと鏡をのぞいて、お母さん、いる?
などと、語りかけてしまいました。
不思議ですね。
母の日は、あらためて母に思いを馳せる時期です。
- 参照文献リスト
1. 『嗅覚と自伝的記憶に関する研究の展望』 - 著者:山本晃輔
- 掲載誌:心理学評論 第58巻 第4号(2015年)
2. 『匂い手がかりによる自伝的記憶の想起に言語情報が及ぼす影響』 - 著者:山本晃輔・豊田弘司
- 掲載誌:大阪産業大学人間環境論集 第10巻(2011年)
- 3. 『嗅覚刺激による自伝的記憶の無意図的想起:匂いの同定率・感情価・接触頻度の影響』
- 著者:中島早苗・分部利紘・今井久登
- 掲載誌:認知心理学研究 第10巻 第1号(2012年)
4. 『匂い手がかりが自伝的記憶の特定性におよぼす影響』 - 著者:星野祐司・林明日香
- 掲載誌:立命館人間科学研究 第28号(2014年)
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