香道とアロマの共通点：心を整える“香る暮らし”のすすめ

2025年4月30日2025年5月11日

日本人の「きれい好き」は、掃除の習慣や香りを大切にする文化と深くつながっています。神道の“清め”や、香道に見る“香りの美学”など、古くからの日本の暮らしとアロマの世界が響き合う様子を、アロマセラピストの視点でお伝えします。

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香りと清めのこころ：日本人のきれい好きと“香る暮らし”の心地よい関係

「清潔さ」と「香り」が、私たち日本人の心や暮らしと、どんなふうに結びついているのでしょうか。

“きれい好き”は、実は心の整え方？

「日本人はきれい好き」なんて言葉、よく耳にしませんか？

たしかに、玄関で靴を脱ぐ、お風呂に毎日入る、年末の大掃除……そんな習慣をあたり前のようにしている私たちですが、これは単に「清潔が好き」というだけではなさそうです。

実は、日本には昔から「穢れ（けがれ）」を避ける、という考え方があるんです。

神社でお参りする前に手を洗って口をすすぐ“手水（ちょうず）”も、体と心を清める意味がありますし、お正月に向けての大掃除も、年神様を気持ちよくお迎えするための“お清め”です。

つまり、「きれいにすること」って、どこか“心を整える”こととつながっているようです。

香りとともに生きる文化：香道の世界

では、「香り」はどうでしょう？

日本には“香道（こうどう）”という、美しい香りをたしなむ伝統文化があります。

茶道や華道と並ぶ「香りの道」とも言える世界で、香木の香りを聞いて（嗅いで）心を静めたり、物語を感じ取ったりします。

香道では、香りを“聞く”と表現するんですが、それはただ匂いを嗅ぐということではなく、「香りと向き合い、心を澄ませる」という意味が込められているそうです。

とても奥深くて、素敵な考え方ですよね。

私たちがアロマを楽しむときにも、ただ「いい香り〜」と感じるだけでなく、心がふっと軽くなったり、呼吸が自然と深くなったりすることがあります。

それは、もしかすると香道と同じように、香りが私たちの“心の景色”を整えてくれているからなのかもしれません。

お掃除とアロマの、心地よいコンビ

最近では、お掃除にエッセンシャルオイルを取り入れている方も増えていますね。

たとえば、床拭きにレモンやティートゥリーの香りを使ってみたり、トイレや玄関にユーカリやペパーミントをデフューザーで拡散させたり。

香りの力でお部屋の空気がすっきりするだけでなく、「よし、掃除しよう！」という気持ちも自然とわいてきたりしませんか？

アロマの香りは、行動の“スイッチ”になることもあるんですね。

しかも掃除のあと、ふんわりと漂う香りが心地よいと、「今日もいい時間が流れてるなあ」と感じられます。

清潔な空間とやさしい香り、このふたつはまさに、心にとってのごちそうかもしれません。

香りを感じる“間”のこころ

日本人の暮らしの中には、「間（ま）」を大切にする文化もあります。

言葉の“間”や、人との距離の“間”、そして家の空間の“間”にも、気持ちを込める感覚があるんです。

香りは、その「間」をさりげなく満たしてくれる存在でもあります。強く主張せず、でもふっと漂ってくるやさしさ——。
まるで、人と人との間にそっと寄り添う、やわらかな気配のよう。

そう考えると、アロマの香りを暮らしの中に取り入れることは、ただ“香らせる”だけでなく、心の余白や静けさをつくる、小さな“儀式”にもなりそうですね。

さいごに：香りとともに、やさしく生きる

かつて、私は片づけ、掃除が本当に苦手でした。

掃除が苦にならなくなり、香りを楽しんだりするようになったのは、50才を越えたころだと思います。

掃除や片づけは、忙しい毎日の中で、心をリセットする大切な瞬間。

そして、香りも心に余白をもたらし、無心にしてくれます。

私たち日本人が昔から大切にしてきた「清め」や「香りを聞くこころ」は、今の私たちの暮らしにも、そっと息づいているのかもしれません。

どうぞ、今日という日も、自分にやさしい香りをひとつ選んでみてくださいね。

きっと、空間も心も、ふわっと軽やかに整っていくはずです。

参照文献
『清めと祓い：日本人の清潔観』／宮田登（著）岩波書店（1995）
『掃除道入門』／鍵山秀三郎（著）PHP研究所（2003）
『香道入門』／上野香山（著）淡交社（2007）
　『アロマテラピー図鑑』／パトリシア・デーヴィス（著）、高山林太郎（訳）フレグランスジャーナル社
『においと香りの文化誌』／多田純一（編著）ミネルヴァ書房（2007）