寒い季節にはからだを温めることが大切です。暖房や防寒に加えて、からだの中から温めるためにはまずは食事です。そんなとき、加えたいのがスパイス。また、食事だけでなく、エッセンシャルオイルとして利用できるスパイスの香りと、実際にマッサージオイルとして利用できるスパイスもあります。そんなスパイス系オイルを紹介していきたいと思います。

スパイスとはなにか
そもそも、スパイスとはどのようなものだといわれているのでしょうか
スパイスとは、特定の地方だけで採れる天然の産物で、その風味や香りのために、産地から遠く離れた土地で珍重され、高い値で売れる。これらの強力で、快く、官能的な芳香をもつ物質は、食べ物や飲み物、香油、ワックス、香水、化粧品、薬剤などに使われてきた。スパイスはこうしたさまざまな形で、食欲促進剤、消化剤、防腐剤、治療薬、強壮剤、媚薬として人類の役に立ってきたのである。
引用 アンドリュー・ドルビー著 スパイスの人類史
スパイスと聞くと、古代から、シルクロードや交易の主要な取引商品として世界を席巻してきた、というイメージを思い起こさせます。
そして、引用にあるように、スパイスとは、現代のように病気やけがに対する治療や薬がなかったころには、大変貴重な役割をしていたことがわかります。
現代はスーパーなどにスパイスコーナーがあり、瓶に入ったスパイスが並んでいます。
これらはかつて大変高価に取引されたものだと想像を巡らすと当時の貴族の気分にも(?)なります。
この季節にぜひ使いたいスパイス・ノートのエッセンシャルオイルにはどんなものがあるでしょうか。
スパイスノートのエッセンシャルオイルのプロフィール
シナモン(Cinnamomum zeylanicum)

クスノキ科
産地はスリランカ、スマトラ、マダガスカル
クスノキ科の常緑樹。通常樹皮を食品などにつかいますが、樹皮のエッセンシャルオイルは皮膚刺激が強すぎるため、トリートメントには使用しません。
シナモン葉の場合でも含有成分にフェノール類がふくまれるため、十分希釈して使用します。
ディフューザーなどで香りを拡散させてもいいでしょう。
香りは、ミドル・ノート(揮発しやすい順に、トップ、ミドル、ベースがあります。)甘くて刺激的な香りです。
血流を良くし、からだの各器官の働きを助けます。からだが生き生きとしてくるといってもいいでしょう。
ブレンドして合うオイル
オレンジ、カルダモン、グレープフルーツ、サンダルウッド、シダー、ジャスミン、ジンジャー、ゼラニウム、フランキンセンス、ベルガモット、ベンゾイン、ミルラ、マンダリン、ラベンダー、レモン、ローズマリーなど。
ブレンド例
手足の冷え レモン、ローズマリーなどと(足浴、または1%希釈でフットマッサージ)
足浴や手浴などをおこなう場合、直接エッセンシャルオイルをいれるのではなく、乳化剤などにいれてからお湯にいれましょう。
インフルエンザ予防 クローブ、タイム、ペパーミント、ユーカリプタス、ラバンジン(ディフューザーなどで香りを拡散させましょう)
ジンジャー(Zingiber officinale)

ショウガ科
産地はインド、中国、インドネシア、熱帯地方
ジンジャーは日本ではショウガとして、とてもポピュラーです。
歴史は古く、熱帯アジアで栽培されていました。紀元前5世紀に活躍した孔子の「論語」にもショウガに関しての記載があるそうです。
ジンジャーは消化を助け、風邪の症状をやわらげるために使用されてきました。ジンジャーエールやカレーなどにも使われます。
ビタミンC が豊富なため、中国の船乗りたちは壊血病の予防にショウガを良く食べていたそうです。ショウガの根は運搬が容易なため、ほとんどの熱帯地方で栽培されています。
また、いくつかの研究ではジンジャーの9つの成分がセロトニン受容体(5HT-受容体)に働きかけ、副交感神経を優位にすることで消化器への効果が期待できるようです。
ジンジャークッキーやジンジャーエールなどで親しまれています。
ブレンドして合うオイル
イランイラン、オレンジ、カルダモン、グレープフルーツ、ジャスミン、ゼラニウム、ネロリ、プチグレン、ベルガモット、ベンゾイン、マージョラム、マンダリン、ペパーミント、ラベンダー、レモン、レモングラス、ローズマリーなど
ブレンド例
消化不良 食欲不振 スペアミント、マンダリン
筋肉痛の緩和のため ラベンダー、レモン、ローズマリー
冬の温めるマッサージオイル オレンジ、マージョラム
ブラックペッパー(Piper nigrum)

コショウ科
産地は、ベトナム、インド、スリランカ、インドネシア、マダガスカル
香りはトップに近いミドルノート。さわやかで乾いたスパイシーな香り。
ブラックペッパーは料理に頻繁に使用されるので、エッセンシャルオイルときくと、意外な感じがしたのは、私だけでしょうか。
世界でもっとも多く貿易されているスパイスです。
4mにも育つ多年生のつる性植物で、4000年以上も前からインドや東南アジアで使用された記録があります。
紀元前13世紀に作られた古代エジプトファラオ、ラムセス2世のミイラの鼻孔にブラックペッパーが詰められていたのが発見されたそうです。
日本では奈良時代に伝わり、正倉院の宝物に残されています。
使用法はジンジャーに似ており、温めて血行を良くすることでからだの動きをスムーズにする作用があります。こわばりのある関節や冷え、むくみのある脚などに効果的です。
ブレンドして合うオイル
イランイラン、グレープフルーツ、サンダルウッド、サイプレス、シダー、ジュニパーベリー、フランキンセンス、ベルガモット、レモン、レモングラス
ブレンド例
消化促進 オレンジ、コリアンダー
リンパドレナージュ用 グレープフルーツ、ジュニパーベリー
魅力的な香油 イランイラン、ナツメグ
コリアンダー(Coriandrum sativum)

セリ科
産地はロシア、エジプト、スロベニア、フランス、ベトナム
香りは、ミドルに近いトップノート。エッセンシャルオイルは種子を使用し、シトラスの香りを伴った華やかなスパイス調。葉はくせのある主張する香り(パクチーとは中国語)。
主に消化器系の不調に効果がみられます。コリアンダーは、インド料理、アラブ料理、中華料理、メキシコ料理などに使われます。古代ギリシャでは少なくとも紀元前2000年から栽培されており、ツタンカーメンの墓からは半リットル分のコリアンダーシードが見つかっているそうです。
コリアンダーは、葉(パクチー)のイメージが強すぎて、その種子ってどんな香り!?となりますが、とてもさわやかです。少し甘みもあり、他のエッセンシャルオイルをブレンドしても邪魔をせず、他の香りを引き立ててくれます。
ブレンドして合うオイル
イランイラン、オレンジ、グレープフルーツ、サンダルウッド、サイプレス、シダー、ジャスミン、ジュニパーベリー、ジンジャー、ゼラニウム、ネロリ、パイン、プチグレン、ベルガモット、マンダリン、ラベンダー、レモン、レモングラス、ローズマリーなど。
ブレンド例
消化促進 ベルガモット、ローズマリー
ストレス時、強壮のためのマッサージ イランイラン、グレープフルーツ、ジンジャー
関節炎に パイン、ジュニパーベリー、レモン
カルダモン(Elettaria cardamomum)

ショウガ科
産地は、南インド、スリランカ、グアテマラ
香りは、ミドルノート、甘くスパイシーなチャイの香り。温かみのあるオリエンタル調のベースに属します。
カルダモンはサフラン、ヴアニラにつづいて高価なスパイスです。エッセンシャルオイルとしても高価です。世界で最も古いスパイスの一つでインドでは古くから珍重されてきました。
また、コーヒーの香り付けにも使われ、アラブ語圏ではとくにその目的で使われることが多いようです。北欧ではパンやケーキなど
ブレンドして合うオイル
イランイラン、オレンジ、カユプテ、グレープフルーツ、コリアンダー、サンダルウッド、サイプレス、シダー、シナモン、ゼラニウム、プチグレン、ベルガモット、マートル、マンダリン、ラベンダー、レモン、レモングラス
ブレンド例
消化促進 オレンジ、コリアンダー
神経疲労時 アトラスシダー、イランイラン、ネロリ
呼吸器障害 カユプテ、ヴアージニアシダー
クローブ(Eugenia caryophyllata)

フトモモ科
産地は、インドネシア、マダガスカル、スリランカ
クローブは日本では丁子(チョウジ)と呼ばれます。紀元前3世紀には中国に伝えられ、その後シルクロードをへて全世界に伝わりました。香りは甘く刺激的で少量加えるだけでブレンドが華やかになり、変化がつきます。ほかのオイルとブレンドして1%まで、20mlのベースオイルに1滴までで使用します。冷えてむくむときなどエネルギーを与えてくれます。
歯科治療のために昔から使用されてきました。鎮痛作用や消毒作用にすぐれています。
中世ヨーロッパでは黒死病(伝染病)を防ぐために、また東南アジアではハエや蛾を避けるために使用されてきました。
歯痛、水虫、消化不良などによく使われます。抗菌、抗ウィルス、抗真菌作用がつよく、感染症のレシピに用いられることが多いですが、皮膚刺激が強いので濃度や量、使い方には十分注意します。
ブレンドして合うオイル
フランキンセンス、ミルラ、ローズ、ラベンダー、クラリセージ、柑橘系、ローレル、イランイラン
ブレンド例
虫よけ、病気除けの オレンジポマンダー (*) オレンジ、シナモン
*オレンジポマンダー(フルーツポマンダー)
神経疲労時のマッサージオイル イランイラン、ナツメグ、プチグレン (1%希釈)
歯磨き粉 シナモン、ティートリー(基剤に0.5%)
まとめ
スパイス・ノートの香りは、スパイスといっても、食事で使うようなスパイシーな香り、というより、むしろすっきりする、甘い香りなど、香りに関しては使いやすいです。
そして、スパイス系のエッセンシャルオイルは、どれも殺菌力がつよく、血行を良くし、暑い地方で使用すれば発汗を促し、寒い地方では温まるというようにホメオスタシスを助けてくれます。
また、食欲不振や、消化不良に作用するなど、消化器系への効果を示す可能性がわかっています。
クリスマスや年末年始の時期に、ディフューザーなどでスパイス系プラス柑橘系オイルを拡散させることで、フレッシュな香りとともに、殺菌力を高めることもできます。
マッサージオイルは、一人一人の肌の状態や、からだの様子などセラピストが聞き取りをおこない、ブレンドをしていきます。
セラピストと相談しながら、楽しくブレンドオイルを作ってみませんか。
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- バーグ文子著 エッセンシャルオイルのブレンド教本 フレグランスジャーナル社
- ケモタイプ精油小辞典 Ver. 3 NARD JAPAN ナード・アロマテラピー協会
- アンドリュー・ドルビー著 樋口幸子訳 スパイスの人類史 原書房
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